◎ 相続税と固定資産税と耕作権(小作権)と離作料・・・市街化区域内農地の耕作権
耕作権(小作権)は借地権ほど強い権利ではありません。
しかし、相続税はしっかり課税されます。
課税されても相続税は払えない事が多いでしょう。
借地権の様にしっかりした権利なら処分換金が可能ですが、小作では処分換金は困難です。
地主側に相続が起こっても大変です。
以下の様に最終的に解決はできるにしても、簡単に換金納税は困難です。
相続税のためにも耕作権問題は解消しておかないといけません。
◎ 耕作権(小作権)問題トラブルの実状
Aさんは小作人、Bさんは地主・・・共に先代からです。
Aさんは、Bさんの農地を借りて耕作しています。
そして、肥料代等を差引き年間で3万円の利益から、
2万円の小作料(地代)を払っています。
小作料の金額は、地元の農業委員会で定められている標準額に適応しています。
平成4年、市街化区域内農地であるこの土地の固定資産税額等が、
年間12万円に引き上げられました。
地主Bさんにとっては、固定資産税等が12万円なのに対して、
受け取る小作料は2万円です。
Bさんは、当然(?)、小作料の増額請求をします。
平成4年までは、年2万円だった小作料が、平成5年は12万円、
平成6年は15万円へとジャンプアップです。
小作人Aさんの利益が3万円である事を考えれば、12万円や15万円の小作料は、
法外な金額になります。
かくして、この小作料増額請求が、裁判に持ち込まれます。
ところで、この農地が生産緑地指定を受けていれば、固定資産税は2万円でした。
生産緑地申請を望むBさんに、Aさんが同意をしなかったのです。
過去の最高裁判決は、この様な場合、小作料の増額を認めています。
◎ 最高裁判決。
平成13年3月28日の最高裁判決では、過去の判決が変更され、
小作料の値上げは認められませんでした。
農地法には、『小作料の増額請求の規定』が有り、
「小作料の額が農産物の価格や生産費の上昇低下その他の経済事情の変動により、
又は近傍類似農地の小作料に比較して不相当となれば小作料の増減請求ができる」
と定めています。
◎ 判決理由。
「固定資産税の引き上げは、《その他の経済事情の変動》には該当しない」、
と言う事なのです。
宅地並み課税の税負担は、
「値上がり益を享受している農地所有者が、資産維持の経費として担うべきもの」、
とされました。
更に、
「小作料は農地の使用収益の対価である。小作農は、農地を農地としてのみ使用し得る
に過ぎず、宅地として使用する事ができない。従って、宅地並の資産を維持するため
の経費を、小作料に転嫁し得る理由は無い」、
との判決です。
結果、Bさんは、2万円の小作料を受取り、12万円の固定資産税を支払う訳です。
裁判は、Aさんの勝利です。
◎ Bさんの対処法。
しかし、裁判では負けましたが、対処法は有ります。
最高裁の判決は、税負担を小作料に転嫁できないならば、
「農地の賃貸借契約を解約し、これを宅地に転用した上、宅地利用し、
相応の収益を挙げる事で解消が可能で有る」、
と言い切っています。
即ち、小作人に『離作料(立退料)』を払って出て行って貰い、
「宅地活用すれば〜?」、と言う訳です。
この場合の『耕作権(小作権)』は、『借地借家法の借地権』とは異なり、
Aさんが思う程強い権利ではありません。
市街化区域内における宅地並み課税は、宅地転用を図る為のものなのです。
Bさんが農事調停に持ち込めば、Aさんに相当の『離作料』を払う事で、
立ち退きが認められるでしょう。
では、《相当の離作料》とは?。
◎ 離作料の設定。
平成元年12月22日、『離作料』に付いて、東京地裁の判決がありました。
判決は、その後の東京高裁でも同じです。
小作人は、「離作料は、農地価格の4割から5割で有る」、と主張していました。
しかし、判決では、
「離作料とは土地価格の何割と言うものでなく、農地賃貸借関係の終了によって
賃借人が被る農業経営及び生計費の打撃を回復するに足りるもの」、
とされたのです。
『離作料』と『借地権』は、違います。
『離作料』の考え方は、
『借地権価格』の様に《借地権割合の価格》と言うものでは無く、
《農業収入の何年分・何十年分》なのです。
先のAさんの年間粗利益が3万円ならば、100年分でも、300万円です。
『離作料』は、大きな金額にはなりません。
そして、この《大きくはない金額》によって、小作人であるAさんは、
耕作権(小作権)を失うのです。

