2017年12月12日

今年の基準地価の特徴(1)

◆ 基準地価:公示地価との違いは地方のウェイトの高さ
 国土交通省は9月19日、2017年7月1日時点の、
 「基準地価(都道府県地価調査)」 を公表した。
 1975年から公表されている 「基準地価」 は、国土利用計画法による
 土地取引の規制を適正、且つ円滑に実施するため、都道府県が毎年7月1日
 時点の地価を調査し、国土交通省が公表するものです。

 尚、国土交通省は基準地価を、調査地点の正常価格、としています。
 「基準地価」 の土地の区分としては、 「住宅地」、 「商業地」 の他、
 工場や物流施設等が立地している 「工業地」、 住宅地として利用される
 予定の 「住宅見込み地」 等が有り、今年は、21,644地点(宅地21,139地点、
 林地505地点) が調査対象となりました。
 具体的な価格の算定に当たっては、不動産鑑定士が土地の収益性や、周辺の
 取引事例等に基づき審査、調整します。
 その際、土地を最も有効に活用した場合を想定し、建造物が有る場合も更地の
 評価がなされます。

 ここで 「基準地価」は、「公示地価(国土交通省公表、1月1日時点)」や、
 「路線価(国税庁公表、1月1日時点)」等と並ぶ代表的な地価指標です。
 特に 「基準地価」 と、 「公示価格」 は類似の調査となっていますが、
 「公示価格」が都市部の比重が高いのに対し、「基準地価」 は対象が都市計画
 区域内にとどまらず、地方部の比重が高くなっている事が特徴です。
 又、相続税や贈与税の算定基準となる 「路線価」 や、都心を中心として四半期毎
 に地価の動きを見る事ができる 「地下LOOKレポート」 が、地価を見るその他の
 指標として利用できます。
 地価の動向を判断するには、公表される統計の対象の特徴や、対象としている
 時期等の特徴を考慮しつつ、複数の指標により総合的に判断する事が
 必要です。

 以下においては、先ず、今回公表された基準地価の動きの特徴を詳しく見て
 行きたいと思います。

◆ 強い地方四市の地価上昇
 今回の基準地価の結果に付き、先ず全国平均で見ると、全用途平均は▲0.3%
 のマイナス(前年比、以下同様)となり、住宅地は▲0.6%のマイナスと、
 前年の▲0.8%のマイナス幅からはやや縮小しました。
 一方、商業地域は 0.5%のプラスとなり、前年の 0.0%から上昇傾向が持続
 しています。
 調査地点数に占める上昇地点数の割合でみると、住宅地では23%、商業地では
 35%の地点が上昇しています。

 三大都市圏(東京圏、大阪圏、名古屋圏)では、住宅地は 0.4%(4年連続の
 上昇)、商業地は3.5%(5年連続の上昇)と、上昇傾向が持続しています。
 上昇地点の割合は、住宅地で44%ですが、商業地では75%とほゞ4分の3の
 地点が上昇した結果となっています。
 三大都市圏を圏域別に見ると、住宅地では東京圏と名古屋圏が前年並みの
 小幅な上昇を示したのに対し、大阪圏では横ばいとなりました。
 又、商業地では総じて上昇基調が強まっており、特に大阪圏では 4.5%と、
 東京圏の3.3%、名古屋圏の2.6%より高い上昇となっています。

 地方圏は地方四市(札幌、仙台、広島、福岡、)とそれ以外の地方では大きな
 差が出ています。
 地方四市を見ると、様相は異なります。
 地方四市の住宅地は2.8%、商業地は7.9%の上昇と、何れも圏域別で最も
 高い伸びとなっています。
 そして上昇地点の割合を見ると、住宅地では 80%、商業地では 95%と
 大半の調査地点で地価の上昇がみられます。
 一方、地方四市以外の地方圏の状況は厳しく、住宅地が▲1.1%のマイナス、
 商業地は▲1.5%のマイナスと、其々前年よりはマイナス幅が縮小している
 ものの、地価の下落が続いています。
 又、上昇地点の割合を見ても、住宅地では 13%、商業地では 16%に過ぎず、
 下落地点が前者で 67%と、未だ大半の地点で下落が持続している事が
 分かります。
 特に住宅地の島根県、 商業地の青森県、長野県、高知県、宮崎県では地価の
 上昇地点は有りません。

 尚、国土交通省は今回の 「基準地価」 の変動に付き、住宅地に付いては、
 「雇用情勢の改善が続く中、住宅取得支援政策等の施策による需要の下支え
 効果も有り、地価は総じて底堅く維持」 したと評価し、商業地に付いては
 「外国人観光客の増加等による店舗、ホテル需要の高まり」や、「主要都市
 でのオフィス空室率の低下等による収益性の向上」、 「都市中心部における
 再開発等の進展による繁華性の向上」 等の背景から、不動産需要が旺盛と
 なり、地価は総じて堅調に推移したと評価しています。
 その他の要因としては、金融緩和の持続を背景に、地方においても再開発が
 活発に行われている事が挙げられるでしょう。

               ≪ 次回、今年の基準地価の特徴(2) に続く ≫






posted by 弘不動産コンサルティング事務所代表 at 00:00| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年12月11日

「解約制限付き信託」登場  親族同意で詐欺を防げ

年間1万件を超える「振り込め詐欺」の被害。
これを防ぐために、お金を簡単には払い出せない 「解約制限付き信託」 と言う
新しい金融商品が出てきた。
どんな仕組みなのだろうか。

普通預金の口座にまとまったお金を預けておくと、キャッシュカードで
簡単に払い出せて利便性が高い一方、振り込め詐欺の高額被害につながり
兼ねない面がある。
日常生活に当面必要の無いお金なら、簡単に払い出せない方が本人も家族も
安心できるのではないか。
こんな発想で商品開発されたのが大手信託銀行の 「解約制限付き信託」 だ。

最大の特徴はお金を一旦預けると、原則として本人だけでは払い出せない事。
三井住友信託銀行 「セキュリティ型信託」 は、予め指定した3親等以内の
親族の同意が要る。
三菱UFJ信託銀行 「みらいのまもり」、みずほ信託銀行 「選べる安心信託」 も
必ず3親等以内の成人の親族か、弁護士、司法書士の同意がなければならない。

こうした解約制限の機能は、以前は顧客から要望があればオーダーメードで
扱っていたが、振り込め詐欺等、高齢者がお金をだまし取られる被害が
社会問題になる中で、各行が相次いで専用商品を出した経緯がある。


警察庁によると、16年の振り込め詐欺の被害件数は1万3605件だったが、
17年は9月までですでに1万2964件に達している。
高齢者の被害が毎日の様に報じられ、「高齢の親が振り込め詐欺の被害に遭う
のではないかと心配した子どもからの問い合わせが増えてきた」 という。

解約制限付き信託は、原則として本人だけで払い出せないのはどの商品も
共通だ。
只、解約制限の厳しさや払い出したお金の使途の制限、預けられる最低金額等に
其々特徴が有る。

セキュリティ型信託は、定期的に一定額を払い出す 「定時定額払い」 に同意が
要らないのが特徴だ。
まとまったお金を預けておいて、毎月の生活費だけを払い出す様な使い方が
できる。
具体的には毎月1回か2カ月に1回、本人名義の同行の普通預金口座に
1万円以上20万円以下の一定額が入金される。

選べる安心信託も、解約制限の他に 「ご自分用受取」 の機能を選べば,
定時定額払いができる。
このため、海外旅行や医療費等でまとまったお金を払い出したい場合だけ
親族が同意すれば良い。
高齢の親が詐欺や悪質商法に引っかからない様、見守りたい子どものニーズに
応えている。

みらいのまもりは払い出したお金の使途に厳しい制限がある。
親族の同意があっても、有料老人ホームの入居一時金か、請求書1件当たり
10万円以上の医療費に充てる場合しか払い出しはできない。
しかも現金で払い出す事はできず、ホームや病院の口座に直接、
振り込まれる。

預けられる最低金額は、セキュリティ型信託が500万円以上、
みらいのまもりが1,000万円以上なのに対し、
選べる安心信託は3,000万円以上になっている。
これは解約制限の他、定時定額払い、子どもや孫への暦年贈与といった
複数の機能を含む商品全体の金額だからだ。

選べる安心信託は老人ホームや家事代行の相談に乗ったり、
割引料金で利用できる業者を紹介したりする電話相談窓口を設け、
高齢者の生活をトータルで支援する。
契約時に預け入れ金額の2.16%の信託報酬、
その後は月1万800円の管理報酬がかかる。

解約制限付き信託は預金保険制度によって1,000万円までの元本が
保護される。
但し、金利に相当する 「収益金 」は確定利回りではなく、
普通預金や定期預金と異なり保護の対象にならない。
収益金の目安である 「予定配当率」 は定期預金とほゞ同水準でお金は
殆んど殖えないが、数百万円、数千万円といった詐欺被害を確実に
防止したいなら選択肢の一つになりそうだ。

           ≪ 日経電子版 NIKKEIプラス1 12月2日 ≫






posted by 弘不動産コンサルティング事務所代表 at 00:00| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする